EverClassic

そして髪の毛は真っ白になった

今日はピアノの発表会だった。 大失敗だった。 なんと、1番初めの音から間違えた。 まさかそんなところで間違えるとは思わなかった。 それに動揺し、気付けば計画していたテンポよりもそうとうゆっくりなテンポになっていた。 焦って戻そうとしたら、今度は速くなりすぎた。 メロディと伴奏は混ざり合い、適切なバランスを保てず、下手の典型的な汚い和音になった。 音色がぐちゃぐちゃになり、灰色になった。 最悪だ。考えていた表現の半分も、再創造することができなかった。

手と足は小刻みに震えだした。 足ががくがく震え、ペダルが今にも狂いそうなのを必死にこらえた。 手なんて、左右に0.5?も振動するという、およそ日常生活では考えられないような生理現象が起こった。 落語でそうとうな度胸がつき、もう人前であがるなんてこととは無縁だと思ってたのに、今日それが崩された。今日の思い出は、これからも潜在意識に潜み、事あるごとに僕を苦しめるだろう。

テンポはかなり狂い、部分と全体の調和をはかろうとすると、さらに頭は混乱する。 テンポが乱れることこそ、悲しいことだった。というのも、そのテンポを導き出すのに、何十回と実験を繰り返し、考えに考えて捻り出したのだ。

盛り上がるところで盛り上がらず、痛恨のミスは、1番の山場で、またミスタッチをした。 ここで間違えることは曲の構造の根幹に関わることだった。この曲は、ソナタ形式ではないけど、それに近い解釈で僕は取り組んだので、激しい展開部を経て、調和をもたらすまさにその音をミスしたので、それに至る今までの紆余曲折はなんの意味も持たなかった。 そこから和音が複雑化し、やがて初めの主題が回帰するのだが、僕はそこで全ての和音が弾けなかった。かろうじて、メロディだけは弾けたので、曲は止まらなかったけど、もう崩れすぎだった。 僕はそこで、英雄交響曲の第一楽章のように主題を回帰させるという、あまりに独創的な解釈をして、聴衆をびっくりさせようと思ってたのに、聴衆は別の意味でびっくりした。 熟慮のすえに導いた演出は、まったく役に立たなかった。

演奏後は階段で転びそうになり、小さい子供たちに笑われた。 聞きにきてくれた友達二人は、プロがかってたと褒めてくれたけど、同情するなら金をくれって感じだった。

100時間以上に及ぶ練習はなんだったのか? 15の音源の聞き比べはなんだったのか? 考えているうちに、今まで寝てしまった。